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『君は俺のこと好きじゃないだろ? だから君と契約結婚をしたいんだ』
『俺のことを好きな女と結婚したら1年後に別れてくれないだろ? それでは困るんだ』
そう。綾瀬さんは私が綾瀬さんのことを好きじゃないから契約結婚の相手として選んでくれたのだ。
もし綾瀬さんのことを好きな女性と結婚したら1年後に別れてくれないからという理由で。
だから私が綾瀬さんを絶対に好きになってはいけないのだ。どんなに好きでも、この気持ちは契約が終了するまで知られてはならない。
私はとにかく契約終了日までは気持ちを抑えて笑顔でいようと心に決めた。
綾瀬さんの記憶の隅っこに私のことが残るとするならば、少しでも可愛かったと思ってもらえる私を思い出してもらいたい。
そして契約が終了してひとりになったら思いっきり泣けばいい。
ひとりになったら綾瀬さんのことが好きだったと、こっそりと声に出して言えばいい。
私だけの一方的な片思いだ。
清貴に裏切られたときのように傷つくこともない。
綾瀬さんを好きな気持ちのままずっとずっと幸せでいられる。
だからそれまでは、絶対に、絶対に笑顔でいる──。
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