最初で最後のデート

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「そんなお礼なんて大丈夫です。私も好きでごはんを作らせてもらってたし、イベントは契約結婚をするときの約束事ですし……。それより理人さん、最近日曜もずっとお家で仕事されてますよね? 時間があるなら少し身体を休められたらどうですか?」 そう、綾瀬さんは少し前から日曜日もパソコンを開いて仕事をするようになっていた。 どうやら前よりも早く家に帰ってくるようになった分、日曜日に溜まった仕事を処理しているようだった。 「いや、この忙しさはあと1、2ヶ月くらいだ。そしたら少し落ち着くから大丈夫だ。それより俺が遥菜にお礼をしたいんだ。だから日曜日、遥菜の時間を俺にくれないか?」 ニッコリと微笑む綾瀬さんの顔に、私は「わかりました」と小さく頷いた。 そして日曜日の朝。 その日は絶好のデート日和というくらいの雲一つない青空が広がり、快晴だった。 綾瀬さんから9時には出発すると言われていたので、6時半に起きて朝食の準備をする。 手軽に食べれるように朝食はアボカドとベーコン、ミニトマトとレタスを挟んだサンドウィッチと、綾瀬さんの好きなゴールデンキウイを用意しておいた。 7時過ぎに起きてきた綾瀬さんが、「おはよう」とにこやかに笑顔を向けてくれる。 こんな生活もあと1ヶ月半も過ぎれば終わりを告げてしまう。 そんな寂しさをグッと堪えながら、私も「おはようございます」と笑顔を向けた。
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