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リビングに入ると、既に支度を終えた綾瀬さんがソファーの上に座っていた。
黒いスキニーのパンツに、ネイビーのシャツ。胸元の開けられたボタンの中からは男らしい色気と白いインナーが見え隠れする。
スラリと足の伸びたモデルのような綾瀬さんにはとても似合っていた。
(かっこいい……。王子様みたい……)
「遥菜、準備できたのか?」
見惚れていた私に視線を移した綾瀬さんが、じっと見つめたまま無言になる。
(えっ? 何かおかしい?)
急に黙ってしまった綾瀬さんに不安になりながら恐る恐る口を開いた。
「へっ、変ですか? ちょっと待っててください。すぐに着替え直します」
私が部屋に戻ろうとすると、綾瀬さんが立ち上がって私の腕を掴んだ。
「いっ、いや、そのままでいい。可愛らしい恰好だと思っただけだ。じゃあ行くぞ」
柔らかい笑みを見せてくれながら、すぐに玄関へと向かう。
(かっ、可愛らしい???)
急にドキドキして顔が熱くなってくる。
綾瀬さんは知っているのだろうか。
こんな言葉を言われたら、私はすぐに綾瀬さんの魔法にかかってしまうことを──。
嬉しさでニヤけてしまいそうな顔を必死で隠しながら、私も急いでその後に続いた。
地下の駐車場に降りて、綾瀬さんの車に乗る。
このフェラーリに乗ることはだいぶ慣れてきたけれど、いったいこれからどこに行くつもりなんだろう。
私は車が高速に乗ったところで、綾瀬さんの方を向いて尋ねてみた。
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