最初で最後のデート

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「あ、あの、理人さん。今日は今からどこに行くんですか?」 「ああ、そうか。行先を言ってなかったよな。これから箱根にドライブに行こうと思ってるんだ。もしかして、他にどこか行きたいところとかあるか?」 「いっ、いえ……。箱根って今まで行ったことがないので行ってみたいです」 箱根にドライブと聞いて、私はとっても嬉しくなった。 これって、綾瀬さんは私へのお礼って言ってくれているけれど、私からしたら綾瀬さんとのデートだ。 綾瀬さんとこんなデートみたいなことができるなんて……。 嬉しくて、夢みたいで、幸せすぎて、胸が高鳴り始める。 「遥菜は箱根には行ったことがないのか。と言っても俺もそこまで詳しくないんだが……。じゃあ箱根でどこか行ってみたいところはあるか?」 「初めてなのでどこでもいいんですけど……、なんか美術館がいっぱいあるって聞いたことがあるので、美術館には行ってみたいです」 答えながら、めちゃくちゃ笑顔が溢れてくる。 こんな風に綾瀬さんの車に乗って、彼女のように行きたい場所を言えるなんて本当に夢みたいだ。 「美術館か。そうだな、ポーラに、ラリックに、成川、ガラスの森、彫刻の森……、そうだ星の王子様ミュージアムっていうのも確かあったな」 綾瀬さんが運転しながら、いくつか美術館の名前を挙げてくれた。 「他にもまだあるらしいが、どこか行ってみたい美術館はあるか?」 「あっ、えっと、できればガラスの森美術館に行ってみたいです。前に美里さんからすごく綺麗って聞いたことがあって……」 「美里さんって、あの遥菜の先輩の人か?」 「はっ、はい。そうです」 「じゃあ、彼女のおすすめの美術館に行ってみるか。実は俺も箱根の美術館は初めてなんだ」 ニヤっと微笑んだ顔をチラリと私に向ける。 そして私たちは最初の行先をガラスの森美術館に決めた。
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