117941人が本棚に入れています
本棚に追加
高速は渋滞することもなく車は順調に走り、10時半過ぎにはガラスの森美術館に到着した。
駐車場に車を停めて降りると、綾瀬さんが突然こんなことを言い出した。
「なあ、遥菜。今日は本当の夫婦みたいに過ごしてみないか?」
「本当の夫婦……ですか?」
首を傾げながら綾瀬さんの顔を見る。
「ああ、俺たちはずっと偽りの夫婦として過ごしてきただろ? だがもう終わりが近づいている。一度くらい本当の夫婦みたいに振舞ってみてはどうかと思ってな。俺もこの結婚が終わればまたひとりに戻るし、最後にそういうのも味わってみたくてな」
綾瀬さんの言ってることは分かったけど、でもいったいどうやったらいいんだろう?
今だって結婚指輪はしているし、他人から見れば本当の夫婦のように見えるはずだ。
普通に話もしているし、これ以外に何を振舞えば本当の夫婦に見える?
「あの理人さん、本当に夫婦のように振舞うって、どうやったらいいんですか?」
斜め上に視線を向けて綾瀬さんをみつめていると──。
「だからこういうことだ」
そう言って、綾瀬さんは私の右手を掴み、手を繋いだ。
えっ? 綾瀬さんと手を繋ぐの???
急にドキドキドキドキと胸が激しく動き始めた。
こっ、これって、本当に本当にデートじゃん……。
わぁー、わぁー、どうしよう……。
最初のコメントを投稿しよう!