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こんな宝物みたいな出来事、嬉しくて嬉しくて堪らない。
大好きな人と、綾瀬さんと、こんな夢みたいなデートが出来るなんて……。
暴れ出した心臓を必死で抑え込みながら綾瀬さんに手を繫がれて歩いて行くと、まず最初の入り口のところで木の枝にたくさんのクリスタルガラスが一粒一粒飾られているのが目に入ってきた。
まるでしだれ桜の花びらのようで、太陽の光に反射してキラキラと輝いている。
「わぁー、すごく綺麗……」
うっとりとしながら眺めてしまう。
「なんか入口だけでも綺麗だよな」
綾瀬さんも笑顔を向けて私に微笑んでくれる。
繋いだ手から伝わる綾瀬さんの体温が胸のドキドキを増加させていく──。
綾瀬さんが受付でチケットを買ってくれて、私の方を振り向いた。
「遥菜、これがチケットだって」
自分の目元に仮面の形をしたチケットを当てる綾瀬さんに思わず吹き出してしまう。
(綾瀬さんって本当はこんなにお茶目で可愛い人だったの?)
「理人さんがこんなことするなんて……。面白すぎです。チケットが仮面の形をしてるなんてすごくお洒落ですね! でもかっこいい人は仮面を着けてもかっこいいんだなって思っちゃいます」
本当に楽しくて私も綾瀬さんの顔を見ながらニコニコしてしまう。
「遥菜も似合うと思うぞ。ほらっ」
そう言って今度は私の目元に手に持っていた仮面のチケットをあてる。
「おお、似合う似合う。ヴェネチアに行って本場の仮装をしたらもっと似合うだろうな」
(ヴェネチアに行って本場の仮装って……)
綾瀬さんとヴェネチアなんて現実には絶対にあり得ないことだけれど、妄想の世界なら許されるはず……と、頭の中でそっと思い描いてみる。
楽しそうに微笑む綾瀬さんと一緒に受付を通り抜けて中に進むと、もっと素敵な景色が目に飛び込んできた。
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