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だったら私も写真が撮りたい。
綾瀬さんの写真が欲しい──。
1枚くらいお願いしてもいいよね?
「りっ、理人さん、私も理人さんの写真を撮ります。だって、こういうのって夫婦だとお互いが撮ってますよね……? ふっ、ふっぅ……」
綾瀬さんは夫婦の振舞いをするために写真を撮っただけだけど、私は綾瀬さんの写真が欲しいだけ。
目的が違うので、最後の方は小さな声でごにょごにょと言いながら顔が真っ赤になってしまう。
「俺も写真撮るのか? それはいいけど、遥菜何でそんなに真っ赤になってるんだ?」
綾瀬さんが私の頬を両手で挟んで自分の方に向ける。不意に顔があげられ、私は恥ずかしくて真っ赤になったまま視線をさまよわせた。
「そんな真っ赤になるほど写真を撮られるのが恥ずかしかったのか? 遥菜は可愛いな」
人差し指でちょんっと私のおでこに軽く触れると、綾瀬さんは橋の真ん中に移動してくれた。
(かっ、可愛いって……)
ドキドキと音を立てる心臓と一緒にぼーっとその場に立ちすくんでいると、橋の中央に移動した綾瀬さんが私に叫んできた。
「遥菜ー、この辺でいいか?」
「はっ、はい。大丈夫です。じゃ、じゃあ理人さん、写真撮りますね。はいチーズ……。あっ、すみません。ちょっとブレちゃったのでもう1回いいですか?」
私はこうして、意図的に綾瀬さんの写真を2枚撮ることに成功した。
心の中でニンマリとしながらガッツポーズを作る。
これは私の宝物だ。
自分のスマホの中に綾瀬さんがいるというだけで嬉しくて仕方がない。
これから綾瀬さんのそばを離れたとしても、この写真があれば頑張れる──。
間違って消すことの無いようにちゃんとバックアップもとっておかないと。
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