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理人Side⑧ -2人の梨香子-
体調を崩してからというもの、俺はどこかしっくりこない毎日を過ごしていた。
それが何なのかは分からないけれど、今までと何かが違う。こうしてこのマンションで梨香子と生活していることも、俺にとっては不思議で仕方なかった。
病院で目が覚めたとき、意識が朦朧とする中、梨香子の姿が見えた気がした。
確か、梨香子とは別れた──。
そう思っていたはずだが、段々と視界がクリアになるとともに、本当に目の前に梨香子が現れた。
「理人さん、心配しました……。こんなに体調が悪かったのに気づかなくてごめんなさい。朝、身体がだるいって言ってたのに……。でも本当に本当によかった……」
梨香子は俺の手を握り、涙を流していた。
身体がとても痛くて怠くて、頭がガンガンする。
これは夢……、なのだろうか……?
そう思っていると病室に兄貴と早川が入ってきた。
兄貴は俺の身体を心配したことや、親父の命令だと仕事を休むように言い、どういうわけか梨香子のことを違う女の名前で呼んだ。
俺は昔から付き合った彼女を一度も親父や兄貴に紹介したことがない。
それは梨香子も同じだった。だから兄貴は梨香子のことを知るわけがない。
兄貴は誰と間違っているのだろうか?
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