理人Side⑧ -2人の梨香子-

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1日の入院を終えて早川に支えられながらマンションに帰ると、なんとそこには梨香子が待っていた。 昨日、兄貴が俺と梨香子が一緒に暮らしていると言った時は信じられなかったが、俺は本当に梨香子と一緒に暮らしていたのだ。 別れたあと、俺は再び梨香子と付き合い始めたのだろうか? そして2人で一緒に生活しようとでも約束したのだろうか? 熱のせいで頭も身体も痛くて怠くて思い出せないけれど、こうしてここにいるということはそういうことなのだろう。 俺は病院で目を覚ましてから何も覚えてない状況に、狐につままれたような感覚に陥っていた。 高熱で苦しんでいる中、梨香子はとても熱心に俺の看病をしてくれた。 汗をかけば服を着替えさせてくれ、身体を温かいタオルで拭いてくれ、熱を測ったり、薬を飲ませてくれたり、お粥を持って来てくれたりと、とても優しく俺のことを気遣ってくれた。 梨香子とは今まで何度もデートはしていたけれど、これほど長く一緒に過ごしたことはない。 こんな知らない梨香子の優しい一面があったのだと、俺はこのとき初めて知った。 そして体調も戻り始めると、梨香子との生活はとても心地いいものになっていった。 朝起きれば、「おはようございます」と笑顔を向けられ、朝食が用意されている。仕事から帰ってくると部屋には電気が点き、テーブルの上には美味しそうな夕食が並べられ、温かい風呂も用意されていた。 今まで女性に対して好きだという感情はあっても愛しいという感情は抱いたことのなかった俺が、初めて女性を、梨香子のことを愛しいと思い始めていた。
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