理人Side⑧ -2人の梨香子-

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だが、日が経つにつれて、俺は梨香子のことが少し変だと感じるようになってきていた。 俺が知っている梨香子と違うような気がする……、いやどこか別人のような気がする……、そう思い始めてきたのだ。 まず最初に違和感を持ったのは、梨香子が俺に対していつも敬語で話しかけてくることだった。 俺が知っている梨香子はいつもフランクに話し、俺のことを理人と呼び捨てにしていた。それがどういうわけかいつも敬語で、それも理人さんと呼んでくる。 それに料理だ。 正直、梨香子がこんなにも料理が上手いとは思いもしなかった。 デートの時はいつも2人で外食をしていたし、一度も梨香子の作った料理を食べた記憶がない。 確か梨香子は料理はあまり得意ではないと言っていたはずだ。 だが、梨香子の作る料理は何もかもが旨かった。 朝食のホットサンドや、おむすびや味噌汁はもちろんのこと、夕食は和食や洋食に中華、パスタにカレーなど、何を食べても旨かった。 料理が得意ではないと言っていたのは嘘だったのだろうか。だが下手ならまだしも、料理が上手いのに嘘をつく理由が、考えても見つからなかった。 そして一番おかしいと感じたのは、俺と距離を取っているということだった。 必要以上に俺に近づこうとしない、寝室を共にしようとしない、俺の世話はたくさんしてくれるのに、いつも俺から必ず一歩引いているのだ。 目の前の梨香子は、俺の知っている梨香子ではなかった。 こいつは本当に梨香子なのか? 数々の違いにそんな疑問さえ頭の中を掠め始める。 そんなことは決してあるはずないのに──。
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