偽りの愛の向こう側【コミカライズ原作】

理人Side⑧ －２人の梨香子－

「お前はそれでどう思ったんだよ。別人だと感じることが嫌なのか？」

「そんなことはない。お前にこういう話をするのもどうかと思うが、嫌どころか前よりも……、いや違う、今の梨香子が愛しくて堪らないんだ。前はそんなこと一度も感じなかったのにな」

海斗にこんな話をするのは照れるが、自分の中の違和感を海斗に聞いてもらったことで少しスッキリした俺がいた。

「それは前の彼女より、今の彼女の方がいいってことか？」

「ああ、同じ梨香子だから比べるのもどうかと思うが、俺は今の梨香子の方が好きだ。俺の気持ちが全然違うんだよ」

海斗は「んんっ」と咳払いをしたあと、少し厳しい視線を俺に向けた。

「なあ、理人。これだけは言っておく。お前が今その目で見てるもの、そして心で感じているものが一番正しいんだからな。もし、これから先に何か疑問に感じることが起こったとしても、今の気持ちを絶対に忘れるな。今、目の前にいる彼女を信じてやれ。今の彼女を大切にしろ。じゃないとお前、絶対に後悔するぞ」

俺の恋愛に口出しなんてしたことのない海斗が、珍しく俺に意見を言う。

「急にどうしたんだよ、海斗。お前がそんなことを言うなんて……」

「いや、お前がいろいろ悩んでるように聞こえたから、アドバイスをしたまでだ。俺も今の彼女の方がお前には合っていると思う。彼女のこと絶対に信じてやれよ」

「今の彼女も何も、梨香子は梨香子だろ。まあ、もう手放す気はないけどな」

そんな会話をしていたところでタイミングよく料理が運ばれてきて、その後も俺たちは色々な会話をしながら食事を楽しんだ。