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「ねえ、理人。どうしてさっきからそんな意地悪ばかりするの? もしかして髪の毛を切ってショートになったから分からなかったとか言わないわよね? さっき名前呼んでくれたじゃない。梨香子よ、梨香子。藍沢梨香子」
「梨香子……?」
ますます怪しい女性だ。
梨香子はこんな女じゃない。
家で一緒に暮らしている女性が、俺の梨香子だ。
「何を言われてるのですか? あなたは藍沢梨香子ではありません。これ以上梨香子の名前を騙るようでしたら、警察を呼ばせていただきます。すぐにお引き取りください」
目の前の女を蔑むように睨む。
「理人、いったいどうしたの? 私があなたを信じて待っていなかったから怒ってるの? 本当にごめんなさい。でも私も反省したの。だから、話だけでも聞いて。お願い」
「まだそんなことを言われるつもりですか? お引き取りにならないようでしたら警察を呼ばせていただきます」
内ポケットから携帯を出し、ダイヤル画面を表示させる。
「ちょっと待って、警察を呼ぶって……。私、梨香子よ。ねえ、理人。本気なの?」
「まだ梨香子の名前を騙られる気ですか? いつまで梨香子になりすますつもりですか? 梨香子は家にいます。ですので警察を呼ばせていただきます」
俺が番号を押して通話ボタンをタップしようとしたとき、梨香子と名乗る女性が、俺の目の前に自分の免許証を差し出した。
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