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「理人、ほら私、藍沢梨香子。見て。梨香子の名前なんて騙ってない。正真正銘、藍沢梨香子よ。警察なんか呼んだらあなたが困るはずよ。だからやめて」
差し出された免許証には、本当に藍沢梨香子と書かれてあった。
一瞬、自分の目を疑う。
「やっと……、やっと信じてもらえたみたいね……」
俺の表情を見た彼女は、安心するように微笑んだあと、馴れ馴れしく俺の腕を掴んできた。
好きでもない女に触れられ、嫌悪感からその手を解くように腕を振り払う。
どういうことだ?
この女が藍沢梨香子?
いや、違う。梨香子は家にいる。
梨香子はあいつだ。
いったいどういうことなんだ?
「それより理人、今あなた私が家にいるって言わなかった?」
目の前の梨香子は俺が腕を振り払ったにもかかわらず、俺に纏わりついたまま顔を覗き込む。それに加え、俺が何も話さないので次々と質問をしてくる。
「それってどういうこと? もしかして、その人と一緒に暮らしてるとか言わないわよね? ねえ、理人?」
俺は目の前の女に視線を向けた。
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