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じっとその女の顔を見つめる。
「理人、私もう一度あなたとやり直したいの。だからお願い、話を聞いて」
「おっしゃることは分かりました。ですがあなたと話すことはありません。お引き取りください」
「理人、ねえ、理人ってば……。話だけでもいいから聞いて。お願いだから……。さっき梨香子が家にいるって言ったわよね? あなたがもし他に私と思っている、梨香子と思っている女性がいるのなら、その人は偽物よ。きっと私になりすましてるんだから。その人が私の名前を騙ってるんだから。私、心配なの。理人、あなた騙されてるかもしれない……」
必死な形相で訴えてくる女をどうにか帰らせ、俺は誰もいなくなった応接室の中で自分を落ち着かせるように大きく息を吐いた。
何が起こったのか──。
頭が混乱している。
理解しようにも、頭がついていかない。
確かに、女から見せられた免許証には藍沢梨香子と名前が書いてあった。
今の女が梨香子?
同姓同名なのか?
いや、そんな同姓同名なやつが俺の近くに2人もいるわけがない。
だとすると……。
俺が今一緒に暮らしている女はいったい誰なんだ?
いや、ちょっと待て……。
それよりなにより、俺はどうして梨香子のことを間違っている、いや、覚えてない……んだ……?
ふと疑問が湧き、プライベートの携帯を出して名前を検索する。
家にいる梨香子が本当の梨香子なら、ここに名前と番号が入っているはずだ。
「えっ? 何でだ? どうしてないんだ?」
何度もスクロールしながら探すが、梨香子の名前は入っていなかった。
「うそだろ……。じゃあ、あいつは誰なんだよ……」
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