理人Side⑧ -2人の梨香子-

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こんなに愛しいと思っている女が梨香子じゃなく、俺の知らない遥菜という女なのだろうか──。 できれば、今日オフィスに来た女が、嘘をついていてほしい──。 免許証を見せられても、心の中でそう願ってしまう。 俺はベッドの端に寄っていた彼女を引き寄せた。 そのまま腕の中に閉じ込める。 「理人さん……?」 彼女は腕の中から戸惑うような瞳を向けて俺の名前を呼んだ。そして俺がゆっくりと顔を近づけると、静かに瞳を閉じた。 このまま真実を追求せずに、彼女を抱いてしまえば今のこの幸せが続くはずだ。俺は心の中でどうすることが一番正しいのかと葛藤していた。 俺が何もしないからか、目を閉じていた彼女が再び目を開けた。 彼女が俺を見つめる。 その瞬間、俺は確かめずにはいられなくなった。 「遥菜……」 彼女の目が大きく見開く。 やっぱり……、やっぱり遥菜なのか……。 うそだよな……、違うよな……。 じっと顔を見つめる。 「いっ、今………」 「遥菜……、なのか………?」 俺は確認するように、もう一度名前を呼んだ。 彼女の瞳からは、大粒の涙が溢れ始めていた。
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