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「りっ、理人さん……、遥菜って……、今……、遥菜って………」
嬉しそうに俺に尋ねてくる。
その嬉しそうな顔を見た途端、俺はショックを受けながら確信した。
「きっ、記憶………、記憶が戻ったんですか……?」
涙を流しながら俺の腕を掴んで何か問いかけてくるが、梨香子じゃなかったという絶望感が俺を襲い始める。
「やっぱり……、梨香子じゃなかったのか………」
心の声がそのまま口から零れる。
すると、途端に彼女の顔が驚いた表情へと変わった。
「やっぱり……、あいつの言う通り、梨香子じゃなかったんだな」
俺はやっぱり騙されていたのだ。
梨香子だと思っていた女が、これほど愛しいと思っていた女が、俺の全く知らない女だっただなんて……。
彼女はすぐにベッドから出ると、寝室から飛び出していった。
追いかけることもできなかった。
どうして騙したのかと聞くこともできなかった。
俺はただショックで何も考えることができず、呆然としたままその場から動けずにいた。
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