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次の日、朝起きるとリビングに彼女はいなかった。
いつもなら朝食が用意されているはずだが、昨日あんなことがあって、彼女も俺と顔を合わせづらいのだろう。
俺としても彼女と顔を合わせたところで、どういう態度で接していいのかもわからない。
俺は彼女が姿を見せないことにほっとしながら、素早く支度を済ませ会社へ向かった。
会社に到着しても、仕事は全くといっていいほど手につかなかった。
これからどうするべきなのか。
どうしたらいいのか。
同じことが何度も頭の中を駆け巡る。
だが、時間が経つごとに少しずつ冷静になる俺がいた。
とりあえず帰ったら一度、彼女と話さないことには始まらない。
どうして兄貴と一緒に俺を騙しているのかも聞いてみないとわからない。
俺は仕事を終わらせるとすぐに家へと帰った。
7時前にマンションに到着し、玄関を開け、リビングのドアを開ける。すると、椅子に座っていた彼女がすぐに立ち上がり俺に声をかけてきた。
「理人さん、お話があります。大切なお話です。着替えたら少しだけ私に時間をもらえませんか?」
俺は自分も話をしたかったこともあり、「わかった」と返事だけをすると、そのまま寝室へと移動した。
服を着替え終わり、再びリビングへ戻る。
すると彼女が俺の顔を窺うように再び口を開いた。
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