一通の手紙

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一通の手紙

やっと一週間の通勤ストレスから解放され、気持ちも開放的になる金曜日の夕方。 スノーエージェンシーは基本週休2日で土日がお休みだけれど、チラシや広告の納期が迫っていると土曜日も出勤になることがある。 明日は切迫した納期の仕事もなく、清貴と一緒に静岡の私の実家へ結婚の挨拶に行く予定だ。 両親には年末に実家へ帰った時に結婚したい人がいることを話していて、今までそんな素振りを見せなかった私に驚きながらも喜んでくれた。 お父さんもお母さんも 清貴のこと気に入ってくれるかな。 そんなことを思いながら、アシスタントミーティングから戻ってくると、私の机の上に一通の手紙が置いてあった。 封筒の表にはパソコンで打たれた文字で、会社の住所とともに、『スノーエージェンシー 桜井遥菜』と書かれてある。 こういう類の手紙は多いので、DMかな……と思い裏を返してみると、差出人の記載はない。 宛先には「様」も書いてないし、 差出人も書いてないし、何のDMだろう? なんだか失礼なDMだよね。 私は机の中からハサミを取り出し、封を切った。 そして、中身を取り出して内容を目にした瞬間──。 えっ? すぐに手紙を封筒の中にしまった。
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