理人Side④ -初めての気持ち-

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「綾瀬常務、初めまして。スノーエージェンシーの西田香里です。桜井さんとは以前会社でとても仲良くさせてもらってました。桜井さんはすごく可愛くて私の憧れでした。いつも周りには必ず男性が傍にいて、仲良く楽しそうに笑って話していた姿がとっても懐かしいです。桜井さんが結婚されたって知ったら、みんなショックを受けちゃうだろうな。きっと桜井さんのあの笑顔に勘違いしてた男性も多かったと思うから。ふふっ」 一番俺の大嫌いな女だ。 こういう女を見ると反吐が出そうだ。 婚約者が横にいるというのに他人の旦那に媚びを売り、自分をアピールする。 明らかに好意を持っている目で見つめてくる女に、俺は遥菜の肩に手を回し自分の方へ少し引き寄せ、柔らかい視線を注いだ。 そして、その女の顔を見る。 「そうですか。妻の笑顔は本当可愛いですからね。他の男性が勘違いしたくなるのも分かる気がします。そういう私も妻の笑顔に一目惚れしたんです。ですがもう、今は心配で仕方がないですから私以外の者にはこの妻の笑顔は見せたくないんですけどね」 女の顔が少し引き攣る。 同じように隣の男の顔も少し強張っていた。 佐山さんだけが俺たちの方を向いてニコニコと笑っていた。 ある程度挨拶ができたところで、俺はパーティーを抜けることにした。 遥菜も相当疲れている。 早くこの場から出してやりたかった。 いや、早く連れて帰りたかった。
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