4. 菜園で見たもの

3/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「みんなやってるんだろう? 『畑ドロボー』って。大人になるための勉強だって昔教わったぞ」 「いつの時代の話ですか、それ」 「時代劇の話じゃないよ。それに、アイツらだってやってる」 「アイツら?」 「ハクビシンとかアライグマとか、いるだろ? 連中は生まれついての盗人(ぬすっと)に違いないね。平気で人ん()に入ってくるし」  ムッとしたように言った綿貫さんに、私は呆れてしまった。子供みたいな言い草だ。 「動物は仕方ないじゃないですか。やめてって言っても伝わらないし。とにかく、畑ドロボーは犯罪ですよ」 「……ケチな世の中だなぁ」  困った人だなぁ、と私は思った。  綿貫さんの所持金を確認すると、この間からあまり減っていなかったので、私は彼を直売所に案内した。トウモロコシに興味があるみたいだったから、採れたてを丸ごと焼いてくれる焼きトウモロコシをオススメしておいた。  別に義理がある訳でもないが、何となく綿貫さんを待って一緒に外に出る。傾き始めた太陽が黄色みを帯びて光っている。セミたちの声がやかましかった。  綿貫さんは芯が持ち手になっている小振りな焼きトウモロコシをかじった。ラフなTシャツ姿で、手の土は洗い流したものの鼻の頭はまだ汚れたままの綿貫さんは、ザ・自然体という感じだ。手に提げているビニール袋にも、新鮮な皮つきトウモロコシが3本ほど入っている。  関われば関わるほどよく分からない人だ。自分の世界に閉じこもっている変人とはまたちょっと違う、独特の空気を綿貫さんは持っている。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!