公園沿いのお弁当屋さん

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「えー、めっちゃいーじゃん。なにそれ」 ベッドに寝そべっていた優太が、顔を上げた。 相変わらず、自分の部屋にいるかのようにリラックスしきっている。 「付き合いちゃいなよ。イケメンだったし」 ファスドフード店で、女子高生同士が顔を寄せ合ってするような会話を、なぜこのゲス男ふたりで—— あまりの居心地の悪さに、史人は膝を抱えた。 海人にバイクで送ってもらったとき、ちょうど仕事から帰ってきた優太と鉢合わせた。 既婚者ばかりと付き合っていた史人がこんな若い男を連れているのがよほど新鮮だったのだろう。 優太は品定めするように海人をじろじろと見てから、にっこりと笑って「こんばんわ」と言った。 ——部屋に入ってからは、猛烈な質問攻めにあい、現在に至る。 「優太は……俺に恋人ができてもいいのかよ」 「え。なに、きもい」 「違うよ。そういう意味じゃなくて、クズ同盟にヒビが入るだろってことだよ」 優太はストレートだが、特定の彼女を作らない。 その場限りの相手とうまく遊んでいる。 自分も相手が同性なだけでそれは変わらないから、いつのまにか同志めいた下衆な絆が芽生えていたのだった。 「あのさ、クズ同盟とかやめてくれる? いーじゃん、さっきの子。既婚者じゃないんだし付き合ってみれば? てか、フミが久々に人と付き合うとこ見てみたい」 熱弁する一方で、手元のスマートフォンをしきりにいじっている。 「なにやってんの? さっきから」 「出会い系サイト。仲間内で誰が一番女の子釣れるか賭けてんの」 史人はため息をついた。 珍しくなにかに夢中になっていると思ったら、そんなことかよ。 「お前、そんなんやらなくてもいっぱいいんじゃん」 「ちげーよ。別に女はいいんだよ、どうでも。これは男のプライドの戦いだから。あと、叙々苑の焼肉がかかってる」 史人は横から彼のスマートフォンの画面を覗いた。 ユウタという名前に顔写真、一言「オトモダチをつくりたいです!よろしく!」と書いてあるだけのプロフィールにもかかわらず、ものすごい量のメッセージが届いている。
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