公園沿いのお弁当屋さん

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「泉さん、やだ、待って……」 背後から指先が伝ってきて、入り口にあてがわれた。 公共施設の、扉さえないこの場所ではさすがにまずい———— 思いながらも、久々に味わうその感覚に、抵抗などできなかった。 ずぶりと貫かれ、史人の理性は完全に息絶えてしまった。 「は、はぁ、あ……っん!」 尻を突き出し、自ら足を開く。 洗面器に肘をつくと、水滴がスーツに染みを作った。 パンツの裾も不衛生な床に着いてしまっているが、そんなことはもう、気にしていられなかった。 誰かに触れられること自体久々で、のぼりつめる術を探すほかに、行き場はなどなかった。 「あー、あ……はっ、あっ」 「史人」 指を引き抜かれ、金具の擦れる音がした。 振り返ると、泉が虚な目で見下ろしていた。 ふたたび目が合った時、史人をふたたび危機感が襲った。 このまま体を繋げてしまったら、もういよいよ逃れられなくなりそうで———— 「だめ、待って……いれないで」 熱い塊を入り口にぶつけられた時、思わず叫んだ。 どうにかして逃れようとするが、片手で腰を掴まれ、固定されてしまった。 「入るよ、史人」 「待って、や、やだ……」 懇願も虚しく、泉は呻き、熱い息を吐きながら体を倒してきた。 「あぁ、あ……っ」 久々だから、苦しい。 それでもなんとか圧迫感を緩和させようと、肩で息をする。 しかし泉は、こちらが息を吐ききらないうちに激しく突いてきた。 「あ、あっ……ンッ」 「史人、史人……っ」 「はや、いっ、まっ――」 苦痛と快感が複雑に絡み合って、目尻に涙が溜まってきた。 待って、お願い。 何度も懇願してみるが、泉が手加減してくれることはなかった。 「ん、んん……っ」 史人は洗面器に顔を突っ伏して、その激しい動きに耐えた。 ——突然、泉の気配がすっと遠のいたのは、苦痛を緩和しようと自身に手をのばしかけた時だった。 いきなり引き抜かれたが、体液が伝う感触も、泉が達した気配もなかった。 気味の悪い静けさに顔を上げると、鏡に彼の姿は映っていなかった。 あれ、まぼろし……? ぼんやりしたのもつかの間、外から怒鳴り声が聞こえてきた。 慌てて衣服を整えてトイレから出ると、うずくまる泉と、肩で息をしている海人の姿があった。
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