4 ある日の病室(1)

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4 ある日の病室(1)

「おはようございます」 「・・あ、おはようございます」 眠れなかった日々が続いていたものの、入院して1週間くらい経った頃からだろうか、薬を飲むことが習慣化すると、夕食後に出された薬を飲めば自然と眠気が訪れ、眠りにつくことができるようになった。毎朝7時を過ぎた頃に病室を巡回してくる看護師さんと一言二言話をするのが日課だった。 「今日、小林さんなんですね」 「そうなんですよー、斉藤ちゃんがお休みで」 看護師の勤務シフトは結構頻繁に変わるものらしく、誰が何曜日にいて、といったことは、結局、退院のときまでわからずじまいだった。入院して1ヶ月もすると僕がいた病棟4階の看護師さんとはすっかり顔見知りになり、気兼ねすることなく話をするようになっていた。 「35.4℃ですね。血圧もいつもの通り。じゃあ、失礼しまーす」 6人部屋の各ベッドを覆うカーテンを引く音とともに小林さんが去って行くと、彼女が来る前にそうしていたように、ベッドに寝転がって天井に視線を向けた。 今日は先生が見舞いに来てくれることになっていた。
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