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高校生の頃の私。言われた通り勉強するのが嫌で、意味もなく友達と遊び回っているくせに、どこか漠然とした将来の不安に眠れなかった。自分が何者になるのか怖くて震えていた、つまり普通の女の子だった私。
少女漫画やドラマの世界に強く憧れていて、きっと友達の中で誰より彼氏という存在を欲していたのに、なかなかできなかった私に念願の彼氏ができたのは、高2の秋だった。
私の初めての彼氏は相沢蓮と言った。
正直、私の彼氏にしてはもったいなさすぎる人だった。
剣道部のエースで背が高く、涼しげな目元が印象的なイケメンだった。
私がなぜ私が蓮と付き合えたのかは本当に謎なのだけれど、同じクラスで席が近かったり、同じ歌手が好きだったのもあってよく話してはいた。
母校では毎年9月に文化祭があった。高2のときの出し物は演劇、白雪姫だった。
蓮は王子役で、私は王子の衣装係だった。
蓮が王子役をやることは、前々から決まっていたようなものだった。
女子から圧倒的な人気を集めていた蓮は、役ぎめの投票のとき、王子の蓮を見たい女子達、そして女子に言いくるめられた男子達によってクラスのほぼ全員の票を獲得し、やりたくもない王子役をやらされることになったのだった。
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