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はじめはすごく嫌そうにしていた蓮は、ふと何かに気づいたような顔をして、言った。
「俺がやるのはいいから、衣装係俺が選んでもいい?」
蓮の王子役が見たいだけの人達はそんなことね、というふうに笑いながらいいよ、と言った。だけど、本当に蓮に恋している数人の女子が身構えたのがわかった。
その時の私にとって、蓮は格好いいけれど、恋をにはおこがましい存在だったので、蓮が王子を演じることに心の中でガッツポーズしつつ、どこか他人事で、その時の話も少しぼーっとして聞いていた。
すると、視界に蓮のきれいな顔が飛び込んできた。思わずのけぞる。
「お願いしても、いいかな?」
私だと思わなくて、あった目を逸らそうとしたけど、逸らせなかった。
「え…?わたし…?」
「うん…迷惑だったらいいんだけど」
蓮が遠慮がちに微笑む。薄い唇は形が良くて見惚れてしまう。
私がなかなか返事をしないので、蓮が目を逸らしそうになる。
「わ、わかった、やる、」
引き止めるように言うと、蓮はほっとしたように笑った。
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