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「明希ちゃん、ごめん……俺、早くて……」
「え……あ、謝らないで? 私も、そのー……なんか、我を忘れちゃってたっていうか」
「うん……今日の明希ちゃん、いつにも増してえっちだった」
「はっ……!? だ、だってっ、純くんがいつもと違うんだもん!」
「ふふ、そうだったね。でも……嬉しかった」
はにかみながらそう言うと、立岡は赤く色づいた明希の唇にそっとキスをした。
つい今しがたまで激しく愛し合っていたとは思えないほどそのキスは優しくて、明希はうっとりと目を細める。今が一番幸せかも、なんて柄にもないことを思った。
「ねえ、明希ちゃん」
「ん……なあに?」
「もう一回しよ?」
穏やかな空気が漂っていたところに、立岡が突然爆弾を落とした。
あからさまに顔を引きつらせる明希とは対照的に、彼は「何か問題でも?」とでも言いたげに首を傾げている。
「あ、あの……今日はもう、ちょっとしんどい、かな」
「えっ……」
明希がやんわりと断ると、それまで楽しそうだった立岡の表情が一転悲しげに曇った。
先ほどまで散々いたぶられたとはいえ、可愛らしい顔をしている彼に捨てられた子犬のような目をされると、自分が悪いことをしているような気になってしまう。
うるうるとした瞳を向けてくる彼に根負けして、明希は人差し指を立てた。
「……じゃ、じゃあ、あと一回だけね?」
「やだ。……少なくとも、あと二回はしたい」
「そっ、それは無理! 体力的にむりっ!」
必死の形相で断る明希に対して、立岡は不満げな様子を隠そうともせず唇を尖らせている。そんな顔をされても無理なものは無理、と明希が突っぱねると、彼は渋々といった様子で頷いた。
「……じゃあ、今夜はあと一回にする。でも、明日の朝もう一回しようね」
「えっ」
「しようね?」
「は……はい」
有無を言わさぬ圧力に明希が思わず頷くと、立岡はようやく笑顔を見せる。そして早速明希の体を組み敷きながら、「大好きだよ」と甘く囁いた。
七つも年下の彼に絆されていることをしっかり自覚しながら、明希は苦笑いをこぼしつつ彼への愛を精一杯伝えることにした。
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