14.君と私

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 昼食を食べ終えた二人が会議室へと向かうと、すでに岩村が待っていた。  長机を挟んだ向かいにある椅子を顎で指され、明希と立岡は静かにそこに腰掛ける。 「なんだ? 二人とも、やけに緊張してるな」 「あっ……まあ、はい……」 「もしかして、誰かからもう聞いたのか? 例の話」  足を組みながら問いかけてくる岩村に、明希と立岡は二人揃ってぱっと顔を上げた。それを見た岩村は、「やっぱりな」と軽快に笑う。 「それなら話は早いな。これ、社長から預かってきたぞ。ほら中里、受け取れ」 「えっ? わ、私……ですか?」  岩村に手渡されたのは、両手に収まるほどの大きさの白い紙封筒だった。  立岡に転勤の辞令が渡されるのだとばかり思っていた二人は、訳が分からず目をぱちくりさせる。 「ま、まさか……私が転勤するんですか!?」 「はあ!? なんだそれ! 転勤なんてさせるか、やっと使えるようになってきたばかりだってのに!」 「なっ……じゃ、じゃあこれは何なんですか!?」 「ごちゃごちゃうるせえな、いいから開けてみろ!」  岩村にそう言われて、明希は釈然としないままその封筒を開けてみることにした。困惑した様子の立岡が、その手元を凝視している。 「……え? これって……旅行券、ですか?」  封筒の中に入っていたのは辞令ではなく、何の変哲もない旅行券だった。  ぽかんとした顔でそれを手にする明希をよそに、岩村は何やら嬉しそうに語り始める。 「いやあ、まさか中里が社長賞とるなんてなぁ。俺に怒鳴られてピィピィ泣いてた奴が、よくここまで成長したもんだよ。お前、しょっちゅう『温泉行きたい』ってぼやいてただろ? 良い機会だし、これでちょっといい温泉旅館でも泊まってこいよ」 「は……? お、温泉? ていうか、しゃ、社長賞!?」  明希が思わず大きな声をあげると、岩村は「はあ?」と怪訝な顔をしながら首を傾げた。  隣に座る立岡も何が何だか分かっていないようで、ただおろおろしながらそんな二人を交互に見ているだけだ。
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