14.君と私

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「何驚いてんだよ。もう聞いてたんじゃなかったのか?」 「き、聞いてないですよ! え、社長賞って、本当に? 本当に私ですか!?」 「やかましいな! そんなに疑わなくてもいいだろ、お前が担当した新商品があれだけ売れてんだから」 「そ、それはそうですけど! え、ということは、この旅行券は、私に……?」 「だからそうだって言ってんだろ! いらねえなら俺がもらうぞ!」 「わーっ、ダメですダメです! これは私のものですっ!!」  旅行券をひったくろうとする岩村から逃げて、明希は未だにぽかんとしている立岡の背に隠れた。そしてもう一度手の中にある封筒をよくよく見てみると、そこには確かに「社長賞 中里明希殿」と印字されていた。それは紛れもなく、明希に与えられたものだ。 「……やっ、た。やったよ、立岡くん! 社長賞だって!!」 「は、はい。おめでとう、ございます……?」 「おめでとうじゃないよ! これは私たち二人で取ったようなものなんだから! ありがとうっ、立岡くんのおかげだよ!」  がっしりと立岡の手を握ると、ようやく彼も状況を理解したようだった。  立岡の顔にもだんだんと笑みが戻ってきて、「僕も嬉しいです」と手を握り返してくれる。 「あ、それともう一つ話がある」 「えっ」 「立岡、お前は四月から正式に営業として働いてもらうことになった。だから、中里のアシスタントは卒業だ」  浮かれていた気持ちが、一気に地まで落とされたような気がした。  凍りついてしまった二人に構わず、岩村は至って冷静に言葉を続ける。 「立岡も、ずっとアシスタントやってるわけにはいかねえからな。ちょうど宮城のとこが人手欲しがっててな、そっちに行ってもらう」 「あ……やっぱり、そうなんですね……」 「やっぱり? ああ、なんだ。こっちの話をもう聞いてたのか」  岩村はそう言いながら、手元にあった一枚の書類を、今度は立岡に手渡した。  やっぱりそうだよね、とどこかがっかりした気持ちでその光景を見つめながら、明希はすとんと気が抜けたように椅子に座り込む。そして、受け取った書類を真剣な顔で読んでいる立岡の横顔をちらりと窺い見た。
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