真相

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「ミカ科長……」     テルミが見つめる先で、ミカは椅子の背もたれに背中を預け、力なく天井を見つめていた。 「ジンにも疑われていたけど……まぁ、概ねあなた達の考えた通りよ。確かに『素人』だったノイマンを整備職にスカウトしたのも『こっちの言う通り、何も考えずに動いてくれるだろう』という思惑だったわ。けど、思ったよりもジンが熱心に指導してたみたいね」  ジンはノイマンの事を『見た目よりも飲み込みが早い』と評していたが。 「で……彼には死んで貰ったわ。その時点では、まだ計画が達成出来てなかったからね。そしてノイマンを殺したシドウは私の仲間……。いえ、正確に言えば『私の』よ」  にっ……と意味深げにミカが笑う。 「他所の部署の人間なのに『部下』だと……? そうか……『サダメ』だな。もしや正体の見えない『サダメのトップ』ってなぁ、お前なのか?」  ジンの声に怒気がこもる。 「ううん、それは違うわ。あくまでサダメのトップは『神』よ。宇宙開発の神……。私はその『意思』を実行に移す、いわば祭司……とでも言えばいいかしら」  ミカは直接関与を否定しなかった。 「何て事……じゃぁ、火星で起きたウイルス騒ぎの『真犯人』も?!」  そうだ、あの事件の『実行犯』であるマーレも『サダメ』の信徒だった。 「アタシとジンさんを遠ざけている間に、炭素置換装置を壊すために?」 「……そう言う事。私の目的は大量殺人じゃないから、なるべくこのデイモス・ステーションから人間を逃しておこうと思って……その口実としてウイルス騒動を起こしたわけ。そして、それを利用して『勘の鋭い人間(あんたたち)』を、計画完了まで隔離しておく目的もあった……。その間、施設管理科の素人(みんな)に死んだノイマンの代わりとして働いて貰ったわ。ホントは人数を増やすとバレやすいから避けたかったんだど」  無表情なままにそう語るミカは、まるで他人事のようだ。 「同じくサダメの信徒であるシロウは施設管理科で情報システムを担当してたから、DOGIにアクセス権があったし……だから彼に頼んでシステムの改ざんをしてもらったの。ふふ……あの子ったら、ウブだから『シドウさんにバレやしやないか』って、怯えちゃってさ……」 「そんな馬鹿な……何のために、そんな真似を! 分かってますよね? 人類の未来が掛かっている火星プロジェクトの妨害は重罪……死刑が待っているんですよ?!」  テルミが震える拳に力を込めるが。 「うるさいっ! 何が、人類の未来よっ!」  バン!とミカが机を叩いた。初めて見せる、ミカの激高。 「……宇宙開発は、堕落したわ」  ワナワナと、右腕が震えている。 「あなたもよく知ってるでしょ? このデイモス・ステーションの『惨状』を……『人類が宇宙に進出する足掛かり』ですって? 冗談じゃないわ! 今じゃすっかり、ただの観光地じゃない!」  はぁはぁと息を切らせ、上目遣いにテルミを睨みつける。 「最初は確かに宇宙開発の資金を得るために『仕方なく』だったかも知れないわ。けど今は『開発』そのものはすっかり停滞し、余った資金はフェニックス上層の銀行口座へ消えてるのよ?! 私、知っているんだから! そんな事が許せるとでも思ってるの?!」  目を見開き、腹に溜まったものを吐き出すかのようにミカが続ける。 「……私達のような宇宙関係者はね……宇宙開発に命を捧げていたのよ。それが人類のためになると信じて! それが唯の金儲けに使われて……黙っていろとでも? これは私だけの意思じゃないわ。そう、サダメ全体の……『神』の意思なのよ!」 「ミカ、てめぇ……分かってんのか? 確かにお前の思惑通り、デイモス・ステーションの評判は地に落ちた。これで当分、ここに観光客が来る事ぁ無いだろうよ」  ジンの声が怒りで震えている。 「だが、地球本部だって馬鹿じゃぁねぇ。来年には金星から、より高度な人工頭脳である『アカツキ』が来る。そうなればもう、簡単にハッキングする事は出来ねぇ……。これでお前ら『犯人』が一掃されれば、またこのデイモス・ステーションと火星は、お前のキライな『観光地』に逆戻りだぞ。だとしたら、お前の悪事なんざ無意味だろうが」 「ふふ……さぁ、はどうかしら?」  ミカが目を細め、悪魔を思わせる含み笑いを浮かべた。
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