東の心の臓。

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 軽く鼻で笑ってやる一刀。ひねくれた其の態度へ、錦は眉を潜めた。そして。 「一刀は絶対強いよ!」  其の声も眼差しも強くて、一刀は目を丸くさせる。 「何故、そんなふうに思うのだ」  錦が、笑顔を浮かべた。 「優しいもの!」  一刀は、そんな錦の答えと笑顔に一瞬声を失ってしまった。己は、そんな人間では無いと言うのに。此の笑顔が、あまりに美しくて、眩しくて。一刀は、暫く声が出なかった程であった。  其の後は適当に話を切り上げ、戻って来た執務室。しかし、先程錦と交わした話が己の集中力を削いでしまう。筆を取っても落ち着かず、小休止として護衛の陽炎を連れ庭へ出て来た一刀。まだ秋の色が濃いが、冬も迫っている。一刀が、最も好む景色がもうすぐ訪れようとしていた。そんな秋の庭を只無言で歩いていた一刀の足が、ふと止まる。続き、陽炎の足も。 「陽炎」  冬の景色へ視線を向けたまま、静かに呼び掛けられた陽炎。其の背後で片膝を付く。 「はい」 「俺は、何人手に掛けただろうか」  続けられた一刀の言葉に、陽炎は一瞬眉を潜めた。 「どうかなさいましたか」  答えでは無く、逆に問う形となってしまった陽炎。一刀は、依然庭を眺めたまま。
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