東の心の臓。

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 さて。そんな東の国には、都を差し置き、東の『心の臓』と呼ばれる程に重宝される地が存在する。名は深雪(みゆき)と呼ばれる地。東の最北、海をも渡らねば辿り着けぬ其の地は、冬には雪と氷に覆われる。だが、其の地の農作物は質も味も良く、広大な大地いっぱいに実る。そして、鉱山も多くあるのだ。其処は正に、東の民の糧となるもの全てが揃う命の地。此の地を所有するからこそ、東は西以上の発展を遂げたと言うても、過言ではない。  深雪の地で働き、暮らす民も勿論居るが、何せ冬の環境が非常に厳しい。なもので、冬が訪れる前に深雪を一時去る民が殆んど。其の間の深雪の管理は、民と距離が近い位置にて治安を守る刑事隊と称する部隊が仕切る。其の理由は、厳しい冬の間は鉱山等で働く者達が罪人のみとなり、刑事隊は犯罪者取り調べ、監視監督等も管轄である為だ。  極寒の深雪で働く事は、かなりの重労働。故、不敬、悪質殺人等の極刑相当である重罪人への罰ともされているのだ。当然、罪人達は厳しい監視、拘束を強いられた上でだ。温情等、命を繋ぐ為の最低限の対処。其れでも、越えられたらば本人の悪運、又次の日も拝めよう。しかし、尽きるならば其処迄。ある意味、死罪を言い渡されたも同等である為だ。  そんな深雪に、又冬が来ようとしていた。
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