家族会議

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家族会議

 この番組は生放送の予定で、放送まで1週間以上ある。あのリハーサルの日の晩、私たちは家族会議を開いていた。 「まさかあんなにみすぼらしい身なりをしなきゃならなかったとはな」  旦那が上を向いてポツリと漏らした。旦那は自分の稼ぎが悪いことを卑下して、惨めに話す役を演じていた。別に旦那の稼ぎは悪くない。それなのに卑屈にならなければならないことに私は悔しさを覚えていた。 「私なんて、あんなボロボロの制服で出なきゃならないのよ」  葵の設定もひどかった。あんな恰好で出れば番組を見た友人に変な目で見られることだろう。 「俺たちもなかなかだったよな。二人分買う金がないから体操服は使いまわしてるって。同じクラスだっつうの!」 「僕だって。ゲームボーイなんて初めて見たよ! 誰も知らないよあんなゲーム!」  大輝は親戚のおじちゃんから譲り受けた古いゲームで我慢しているという設定だった。  みんなおのおの惨めな役割を与えられ、しゅんと下を向いていた。 「まあ、でも、100万円もらえるんだもんね」  葵が覚悟したというように笑顔を見せると、私はズキッと心が痛んだ。やがてしばらくの静寂のあと、私はゆっくりと皆を見回し提案した。 「ねえみんな。やっぱりこうしない?」
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