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思わぬ相談事に
「それで、相談事とは何だ。」
私は、話を促した。
「私、不倫してるんだ。」
食事中でなくて、良かった。口の中の物を吐き出すであろう。
私は、もう驚かないぞと心に固く決めた。
「お店によく来るお客さんでね。高価な万年筆を置き忘れたから、お店の外まで届けたの。大事な物だから、凄く感謝してくれて、それからお店でもよく話をするようになり、気が付けば男と女の仲になっていたわ。今思うと、あの万年筆はワザとね。エヘ、私、うまく、つられちゃったかな。
でもね、それがその男ったら、凄く床上手でね。」
「くだらんノロケ話なら、帰るぞ。」
私は、いい加減、馬鹿らしくなった。
「ゴメン、ゴメン、ここからが本番よ。その男ったら、いつもお金に不自由してさ、食事代もホテル代も、 私が出しいるのよ。それでね、賭け麻雀でメッチャ負けたらしく、私に泣きついてきたの。いくらかって聞いたら、300万円って言うじゃないの。いくら私でもそんなお金出せないって断ったら、AVビデオに出てくれだって。断れば、ダンナに不倫していることをばらすってさ。もう、最低。酷い男じゃん。私もそこまで馬鹿じゃないし、賭け麻雀の話は絶対嘘に決まっていると思うわ。いい加減、あの男と手を切りたいと思っているところに、愛仙と再会したからラッキーじゃん。協力してくれないかな。」
私は、自分の馬鹿さ加減を呪った。いや、これも愛する妻に隠し事をしたため、茉莉の呪いかもしれない。
「それで、その男の正体は何だ。」
「フリールポライターで、名前は 王 朗 (おう あきら)。ほら、見て。これが名刺よ。」
花音に名刺を見せてもらった愛仙は、途端にやる気スイッチが入った。
何故なら、王朗(おうろう)は山東省出身で、清代に螳螂拳を創始した偉大なる武術家である。きっと、その男は関係者に違いないと勝手に思い込んだ。やはり、私は、根っからの武術馬鹿かな。
私は、花音にその男と会う手筈を指示した。
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