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リーリーの指定した食堂に入り、ふたりがけのテーブルに着いた。店内はウクライナ人たちでいっぱいだった。混んでいるから知らぬ同士で相席をしている者も多い。それでも上着の目立つ場所に警察バッジを光らせたトミーと同じ席に座ろうとする物好きなウクライナ人はいなかった。
右を見ても左を見てもウクライナ人。彼らの会話に耳を傾けてみても何を話しているのか少しも理解できなかった。疎外感にうちひしがれながら、ひとりして軽めの食事をとった。コーヒーを注ぎにきた中年女は無愛想な上にウクライナ訛りが酷く、やはりほとんど言葉は通じなかった。それでもチップを弾むと別人のように愛想が良くなった。
トミーの背広の警察バッジを目ざとく見つけたのだろう。ウクライナ人の店主が愛想よく話しかけてきた。訛りが酷いから良くはわからないが、ようするにこれからも時々食べに来て欲しいと言ってるようだ。彼らのように英語が堪能ではない移民の飲食店経営者にしてみれば、現職警官は私服制服を問わずもっとも頼れる用心棒なのだった。トミーは適当に相づちしてやってから、笑顔を振りまくお調子者の店主をカウンターの向こうに追い返した。調子が良すぎる上に、話す言葉もさっぱりわからないが、料理の味は悪くなかった。たまにはここに食べに来るのもいいかも知れない。
食事を終えた後もトミーはそのまま居座り、リーリーが戻るのを待ち続けた。
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