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「茉莉花さんこれもいい?」
カトラリーやシャンパングラスなんかをテーブルに並べていたら、shinさんが取り皿に使う食器を大量に重ねて持ってきた。
「重いよ~気をつけてね」
両手で持つshinさんの下から手を回してお皿を受け取る。shinさんが手を離したら、想像していた以上に重たくて私の両腕が下がった。
『……あっ!』
数枚が滑り落ちそうになった。
「おっとぉ~…」
その様子を見ていたshinさんが慌てて手を差し伸べて、落下を防いでくれた。
私の両手に添えられたshinさんの手。隆二さんの繊細な手とは違う、少し肉厚な料理人の手。
『ごっ、ごめんなさい』
「ちょっと重かったね、ごめんごめん。持つよ」
『すみません、ありがとうございます』
手を引き抜こうとしたら、掴まれた気がした。
私は今……shinさんに手を握られている…?
『……あの、』
shinさんは真正面から私を見下ろして、一度微笑んでからバルコニーで電話中の隆二さんに視線を動かした。
「いーなぁ隆二のヤツ。こんな美人の奥さんもらって…」
ゆっくりと首を回したshinさんがまた私を見下ろした。
「いーなぁ…仲良しで…」
私の指先を撫でながらお皿の束を持ち直したshinさん。そのままテーブルに置き、もうすぐ全部出来るからと言い、笑いながらreiさんのいるキッチンに戻っていった。
手の表面に残る感触。
「…もう久砂たち着くって」
電話を終えた隆二さんがリビングに戻ってきて私の正面に立った。無言で隆二さんを見つめた。
「……どうした?」
隆二さんは少し腰を屈め、あやすように私の髪を撫でる。
「おぉ~い、見せつけんなよ~」
キッチンから届くshinさんの冷やかし。
隆二さんは屈めていた腰を伸ばし、shinさんに向かって小憎たらしい笑みを贈っていた。そして、もう一度私に聞く。どうした、と。
『あ……ううん、何でもないの。料理美味しそうって思って…』
「……あと少し我慢な」
可笑しそうに目尻を下げた隆二さんに合わせて私も笑う。落ち着かなくて、下げた手をぎゅっと握った。
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