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『このひとっていう人に昨日出会ったって言ってたの。昨日だよ?reiさんがどこで何してたか分かる?』
「…うちで仕事してた」
『でしょ?それでね、その人っていうのは笑顔が素敵で綺麗で色気もあって、友達とじゃれてる顔が可愛いんだって」
「…それが俺?」
『そう、それ以外考えられないもん。追いかけるって言ってたし…きっと今日だってshinさんの代わりじゃなくて、あえてreiさんが来たと思うの。…隆二さんに会うために』
「…そ」
『それにね、隆二さんが何かするたびに顔赤くしてた』
「…そ?」
『……reiさん美人じゃない…好き?』
「…………」
『いったぁぁぁぁぁい!!』
これまでずっと足裏を痛気持ちいいマッサージで癒してくれていたのに、隆二さんはいきなり”これ絶対どこかのツボ”っていうポイントを刺激してきた。その顔は”オラオラァ~”とでも言いそうな感じ。
『ご、ごめんなさい!隆二さんは私が好き!私のことが大好き!私のことを愛してる!好きで好きでたまらない!』
「……お前…恥ずかしくねぇの?」
『………』
でも、不安になるじゃない。追いかけるって言ってたし…。
呆れたように笑った隆二さんは、撫でるように手のひらで足の甲を触る。
「それで家出?」
違うよ、隆二さんのことを好きなひとがいたくらいじゃ家出なんてしない。そんな事でいちいち家出してたら、一生帰ってこれないじゃない。
『違うもん…重箱なんてもらってくるから』
分かってるんだよ、ちゃんと。断れないのだって。でもね、あんな完璧な和食作られちゃうと女としてちょっとね。それに、もらってきた隆二さんにもカチンときちゃったんだもん。
「……かわいい家出理由」
イイコ、イイコするように、足の指の間に彼の指が差し込まれた。少し力を入れて握られて、それがポンプの役割をして末端まで血が巡っていく感じ。
「……何度も言うけど、食うつもりなんてはじめからない」
『……うん』
私は繊細に動く隆二さんの指先をぼーっと見つめた。
『マッサージ上手ですね』
「……他もしてやろうか」
『…………』
「……久砂から貰ったやつどこ?」
『……なにそれ?』
ニヤニヤしないでよぉ。
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