相当な女

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それからしばらくマッサージを続けてくれた隆二さんは、何か気づいたというように首を傾げた。 「……なぁ」 『はい』 「そもそも、重箱女の相手って俺?」 『え?』 「俺のことが好きだって?」 『え?』 「……まず、”ふとした笑顔が素敵で綺麗で色気もあって、友達とじゃれてる顔が可愛らしい奴”なんて腐る程いる。店のやつらなんてみんなそう」 『……たしかに』 「お前の思い込みだろ」 『じゃあじゃあ、もしreiさんの相手が隆二さんだったとして、平気だよね?』 「……何が?」 『…誘惑…に耐えられる…よね?』 見つめた先の彼の瞳がゆらゆら揺れていた。 「…耐えられないって言ったら?」 『……そんな男捨ててやる…』 「……それは困る」 くすくす笑いながら、リンパの流れにそって最後に脚を撫で上げたた後、隆二さんは四つん這いになって私に近づいてきた。 「……どけろ」 枕に視線を落とし、顎を横に動かした。 首を伸ばすように顔が近づいてきて、互い違いに唇が触れる。 ゆっくりと、味わうように繰り返されるキスは、とても柔らかい。唇から頬に流れるように移動した口付けの後、耳たぶにも同じような愛撫。 「…俺は……茉莉花が好きだよ…」 耳元でそんな甘いささやき。 一人で悩んでいたことが、二人なら笑い話になる。 私たちは目を合わせて微笑んだ。 隆二さんの頬を両手で包んで、もう少しだけキスをねだった。隆二さんの手が、ルームウェアの裾をたくし上げながら太ももを撫でた。 『…あの、隆二さん…今日は…』 「ん?」 『腰痛い…』 昨日…あんなに激しくされたから…。 隆二さんは身体を起こし、私を抱きしめながら腰をさすってくれた。 このまま寝ようって意味かな…。力を抜いて、彼の胸に寄りかかった。 「……大丈夫」 『……ん、』 「…ゆっくり抱いてやるから」 『………ん?!』 静かに肌を重ねる夜は、なんとなく切なさを連れてきて、感情的になったりもした。 だけど、隆二さんは私の不安を全部拭い去るように、深く、深く、愛してくれた。
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