相当な女

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……ふんっ。 シワ一つ無いようにシーツを整え、その上に枕を投げ捨てる。反動で当たり前のように寄れて、私は無言でそのシワを伸ばした。 分かってる。重々承知しております。 隆二さんはいいオトコ。目の前にして照れちゃうのも分かります。だけどね、その原因を作っちゃう隆二さんが罪人なのよ。 ……ふんっ。 別にね、蔑ろにされてるなんて感じたことありませんよ?むしろ、いつもいつも想ってくれてるのは感じますけど。 だからって、だからって、自宅で他の女をドキドキさせちゃダメでしょーが!! 家だよ、家。しかもキッチン。あーんな背後から腕なんて伸ばしちゃったら、どっからどーみてもイチャついてるカップルにしか見えないんだから。 reiさんが勘違い女だったらどうするの?!完全に隆二さんのこと気になっちゃうよ?! もぉ~………隆二さんのバカ。 やっとの思いでリネンを整え終わった後、私はふだんあまり気にすることのないシェルフのディスプレイにも手を出した。お気に入りの雑貨や本が並んでいるその一角。少しレイアウトを変えようと、本をごっそり取り出した。 一冊一冊タイトルを確認して、棚に戻す。 『ばーか』 一冊。 『あほ~』 一冊。 『イチャイチャしてんじゃねーよ』 一冊。 『つまみ食いなら他所でやれ~』 一冊。 『……………ばか…』 心配になっちゃうでしょ。 隆二さんのこと信じてるけど、それとこれは別っていうか…これ以上世の女性をたぶらかさないで欲しい。 膝立ちしていた私はその場にぺたりと座り込んで、たった今並べたばかりの本たちを眺めた。 洋書だったり写真集だったり。どこにも”ばか”とか”あほ”なんてタイトルの本は見当たらない。 はぁ…と小さくため息をついて気持ちを切り替えようとしたら、まだ手の中に残っていた数冊の本が宙に浮いた。 『えっ…』 音も気配も消してやってきたその人。長い両脚で私を挟み、背後から抱きしめながら本を手に取った。 「……ヤキモチ歓迎」 一冊しまわれる本。 ……聞かれてた。気まず過ぎて、私は肩をすくめた。
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