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五十嵐は千代子の予想通り女たらしで、これまでに寝た女の数はもはや数え切れない。だが、高校の頃からの腐れ縁である春日部零のことに限っては、まともな神経を持ち合わせていた。
「心配なんだよ。ゼロは女というものに希望を見出していない。なのに、千代子ちゃんのことだけは受け入れることができていた。でもこのままじゃ……。いや、千代子ちゃんの気持ちも分かるんだ。まだ若いし、あんな綺麗な子、周りが放っておくはずがない。零がいなかったら俺だって……」
「はい、できたよ。さっさと飲みな!」
京は、眉間に深く皺を刻み、わざとらしく音を立てて五十嵐の前にグラスを据えた。
「俺、客なんだけど」
「開店前に来る奴なんて、客なもんか」
京は、むすっとした顔でグラスに口をつける五十嵐を見て、こっそりと溜め息をついた。
「ワラビーは、イガちゃんが思ってるような子じゃないよ」
「ミヤコが言うならそうなのかもしれないけど。たぶん、今日のことはゼロ、知らないだろうな。俺、どうしたらいいと思う?」
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