セーラー服の若妻

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セーラー服の若妻

 世の中というものは、不思議で満ち溢れているのですね。  十七歳のお誕生日を迎えた日。まだ高校生という御身分なのに、私は十歳も年上の男性をパートナーとして生きることになってしまいました。でもここから始まるのは、そんなことよりも、もっともっと不可思議なお伽噺なのです。  それは下校途中に立ち寄ったスーパーからの帰り道のことでした。私は、学用品が入った鞄と白ネギが二本飛び出る大きなビニール袋をぶら下げて、自転車を漕いでいました。セーラー服のスカーフが風に靡きます。黄昏時の住宅街。家々の隙間から、この世ならざるものが私の手を引いているかのように、自転車は右へ左へとゆらゆら揺れます。つまり、私は自転車に乗るのが下手なのです。夏になって日が長くなったためか、もう五時なのに空はまだ昼間のように明るく感じられました。  私は、夕飯の段取りを頭の中でおさらいしながら、ぐらぐらする前輪をなんとか制御します。二人で囲む夕飯は、私にとっては幸せの時間。無事に一日が終わるという実感がもてるので、ささやかな私の楽しみなのです。そこに美味しいお料理は欠かせません。
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