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「リサイクルと言っても殆どは新品でしてね。水商売の女の子が客から貰った物を換金しに来るので一度も嵌めてない物が殆どです」
「そうなんですか」
「ここら辺はどうですか? 流行りのブランド物ですよ」
店員が勧めてくれた指輪は確かにお洒落で若い女の子に受けそうなファッションリングだった。しかし浩司が欲しいのはもう少し落ち着いた『婚約指輪』と呼べる物だった。
ふとガラスケースの端の方にある指輪が気になった。一昔前風のデザインだが他の物よりも大きめのダイヤが嵌め込まれていた。鑑定書付と書いてあるのでダイヤは本物だろう。
「これは?」
「こちらですか。こちらは少し使用していますしデザインも古いのでお値段は安いですが、ダイヤは本物で質も良いです」
「そうですか」
気になって見つめている浩司に、店員は小声で話し始めた。
「こういう古い物は大抵がお金に困って売りに来られるお客様が多いんです。なのであまりおすすめしないし買いたいと思う方も殆どおりません。ほら、なんか貧乏神が付いていそうで」
「確かに……」
明らかにガッカリした顔の浩司に店員はそれまで以上に顔をほころばせて話を続けた。
「ですが……この指輪に関心を持つなんて、お客さん、ラッキーですよ」
「は?」
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