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それからしばらくして浩司は真由子と籍を入れた。結婚式を挙げる予算は無かったので2人で神社へ行きお詣りだけして来た。
真由子の苗字が変わっただけでそれまでとは全く同じ生活を続けていた2人だったが、幸運は突然やって来た。
「真由子、俺正社員になれるぞ!」
「え、本当?」
「なんか上司が気に入ってくれたみたいで今日急に言われたんだ」
「凄い! 良かったじゃないの!」
「ああ。それに今の現場じゃ無くて企画開発の部署に行かされるみたいなんだ」
「え〜、凄いじゃないの! やったわね!」
「ああ。これでやっと安定した生活が出来るな」
「じゃあもう1人増えても安心ね」
「え?」
「エヘッ、実はね、できたみたいなの」
「え? ……もしかして……」
「うん。赤ちゃん」
真由子は産休に入り仕事を辞めた。しかし節約上手な真由子のお陰で浩司の収入だけで何とかなった。慎ましくも幸せな生活だった。
そんな時真由子の両親から思いもかけない話をもらった。それまでは派遣社員の浩司に良い感情を持っていなかった真由子の両親も、浩司が正社員になった事と子どもが産まれる事とで浩司に対する態度が軟化した。
「浩司君も正社員になったんだからローンも払えるだろう」
「え?」
「子どもが産まれるんならアパートじゃ狭いし近所にも迷惑になる。家を買いなさい。頭金くらいは出してやる」
頭金と言いながらも半分は出してくれた。そして浩司はローンを組み人生で最大の買い物をした。
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