名も知らぬ花

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いらっしゃいませ。 快活な笑顔で挨拶をする。社会人として、などと高説ぶるつもりはなく、ただ僕がそうしたいだけだ。 草木は、人は、生き物は、一挙手一投足を全て見ている。──と、僕は思っている。だから僕は、僕の好きな花に、好きだと伝わるようにしている。 声をかけ、水をあげ、愛を注ぐ。 苦手な花も中にはあるが 、基本は変わらない。博愛、などと言うつもりはない。 苦手な中で、自分の中でできる範囲での愛を注ぐ。それだけだ。贔屓をしていると言われれば、それまでの事だ。 僕の苦手な花を愛する人がいれば、目一杯にその魅力を語る。 僕の好きな花を愛する人がいれば、より快くその愛を届ける。 僕を救ったあの花の芳香が鼻腔をくすぐる。 花言葉は、逆境に耐える。苦難の中の力。 この花とともに、歩んでいく。
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