チョコレート・プラリネ・なんとか

それにしても最近、めっきり会話が減ったな。
うつむいてスマホをいじる彼の茶色い前髪をぼんやり見ながら、私は思う。

マグカップを口に運びながら二言三言おざなりな言葉を交わすと、彼の指は待ちかねたようにジーンズのポケットからするりとスマホを抜きとる。
最近ハマっているゲームアプリがあることをわたしは知っている。格闘系のやつだ。課金もしているみたいだけれど、詳しくは知らない。
さっきわたしがシャワーを浴びて出てきたときも、彼は半裸のまま画面の向こうの誰かと闘っていた。
近くのカウンター席に座る妙齢のカップルが醸す濃厚な恋の気配に、胸を締め上げられるような羨望を覚える。

もともと寡黙な人で、そんなところがやたら多弁なタメの男の子たちより大人っぽく思えて惹かれたのではあるけれど、最近輪をかけて無言の時間が増えた。そろそろ就活を始めたいからと、土日にデートに誘われることも少なくなった。