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「いただきます」
二人でいつもの様に手を合わせてそう言った後、目玉焼きから食べ始めた。
「あ、いい感じに半熟」
菜緒さんは自分の目玉焼きを皿に取り分け黄身を箸で崩すと、嬉しそうにそう言った。
「俺は固焼きの方が好きだけどな」
「そう、それで卵焼きは一切砂糖入ってないやつが好きなんだよね柊哉は」
菜緒さんは悪戯っぽく笑った。
「醤油掛けた方が美味いから砂糖とかいらない」
「えー、何でも甘い方が絶対美味しいよ?」
「甘党めちゃくちゃ拗らせてそのうち太っても知らないから」
「それでもいいよって言ってくれる人探すよ」
「だったら俺……」
俺はその時、言い掛けた事を飲み込む様に口を噤んだ。
「え?」
菜緒さんがキョトンとして俺を見る。
「…何でもない。食べないと冷めるよ」
「あ、うん」
それから俺達は殆ど喋らないで、黙々と朝飯を食べ続けた。
心臓の音が、また少し体の中で煩くなる。
ーだったら、俺でいいじゃんー
そんなの、言える訳無い。
言えない。
でも、本当にそう思ってるんだ。
他の誰よりも本当に大事にするから、俺でいいじゃんって……
俺、甥っ子から菜緒さんの彼氏になれないかなって……
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