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まだ朝8時半頃なのに、太陽の光がやたらと眩しく、照り付ける様に地上に降り注いでいた。
今日は二人で一緒に家を出れたので、駅までの道を菜緒さんと並んで歩いた。
「今日も暑くなりそうだねー」
菜緒さんは額に手を翳して、真っ青な空を見つめた。
色素の薄い髪が温い風に緩やかに靡いて、少しも日焼けしていない腕が白いシャツの袖から細く伸びている。
いっそ引き寄せて、抱いてしまえたらいいのに……
何度もそんな事を思っては、その度に何度も自分を責めた。
そして何度も何度も、そんな気持ちを別の事で必死に上書きした。
一度だって、成功なんかしなかったけど……
「あ、そうだ。あの時に聞こうと思ってたんだけど」
菜緒さんが思い出したように言った。
「…あの時?」
「ほら、土曜日ケーキ買いに行った時に好きな人いるかどうかって、柊哉が聞いた話。
私は答えたんだから、柊哉も答えてよ。
この前彼女作らないって言ってたけど、今実は気になる子とかいるの?」
菜緒さんは、悪戯が成功した子供みたいに笑って俺を見た。
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