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「こっくり! こっくり!! こんなところで何をしておる!!」
「えっ!? あ、貴方様はもしや、平将門公ではございませんか!? 気が付くのが遅くなり、申し訳ありません。古い友人の『エンジェルさん』と、念を飛ばしあっておりまして。それよりも、日本三大怨霊のおひとりであるような貴方様が、なぜあたしのような低級霊の元に?」
「こっくり、呑気に友と思念を交わしている場合ではないぞ。一刻も早く身を隠すのだ!!」
「は、はい。でもいったい何が?」
「ついに、恐れていた『妖魔駆除抹殺奨励法』が発令されてしまったのじゃ」
「ようま、くじょまっさつ、しょうれいほう?」
「幽鬼、妖怪、魔獣に妖獣。現代社会においては、我々のような魑魅魍魎の存在は人類発展の妨げになるゆえ、見つけ次第即刻抹消せよという、お上からのお達しじゃ」
「そ、そんな!?」
「既にもう、菅原道真公も崇徳天皇も奴らが発明した『妖魔消滅高エネルギー銃』によって消されてしまった。恐らく次は有名どころの妖怪たちが、標的になるだろう。我にも追手が迫ってきておる。ここに留まっていては、お主まで巻き込むことになる。いいか、こっくり」
「はい、何でございましょう。将門公」
「今すぐに逃げるのじゃ。おまえたちのような動物霊にまで手が回るには、恐らくまだ猶予がある。なんとか生き延びて、いつの日かまた、存在を奪われた『妖』の者らをおまえたちの手でこの世に蘇らせてくれ。出来るか?」
「……は、はい! この身に余る重責ではございますが、将門公の命とあらば、必ずや全うさせていただく所存でございます!!」
「うむ。心強いぞ。さぁ行け! 狐狗狸!!」
追手の目を誤魔化す為に、狐狗狸は、キツネ、イヌ、タヌキの三匹に身を分かつと、夜の闇に紛れて三方に走り出した。
その日が訪れた際には、再び身ひとつとなり、『妖』らを再びこの人の世に跳梁跋扈させようと、野望を胸に抱いて ──。
【了】
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