闇駆ける三匹

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「あー、暇だわぁ。暇すぎるわぁ。  あたしってば、もう何年活動していなかったかしら? だってしょうがないわよね、「お呼ばれ」しないんだから。あたしらってほら、呼ばれてなんぼの世界じゃない? それがここ最近じゃまったくお声が掛からないんだから、寂しいものよねぇ。  哀しいかな今のご時世じゃ、あたしたちみたいな存在は、もう流行らないのかもしれないわねぇ。昭和の頃には、休む暇もないくらい、あちこちから呼びだされて大忙しだったんだけどねぇ。ホント、時代の変化って残酷よね。  え? 最後に呼ばれたのはいつだって? もうずいぶん前の話になるけどさ、聞いてくれる? そりゃもうひどかったんだから。  あたしを呼び出したのわね、中学生の女の子三人組だったわ。人数的にはイイ感じよね。ネットで見つけたとかなんとかで、古い遊びを試してみようとか思ったみたい。  名前を呼ばれて、久々の出番だと張り切って乗り込んでみたらびっくりよ。その子たちったら、紙じゃなくてタブレットとかいう電子機器に「あいうえを」の五十音を書き込んでいるんだもの。  おまけに「はい」と「いいえ」の間には、とさかのついた雄鶏と三角屋根の一軒家みたいな絵が描かれていてね。何かと思ったら、たまげたわぁ、あの子たち「鳥居(とりい)」を知らなかったのよ。だからって鳥と家の絵を描いて『とりい』だなんて強引すぎよねぇ。  でもまあしょうがないかもね、神社仏閣の(たぐい)は、もうずいぶん前に高度文明には不要な物だって、人様の目につく場所からは撤去されてしまったものね。あら知らなかった? 「信仰は争いを生む」って、写真も動画も文献も、一切閲覧禁止状態だって話よ。
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