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「っ!」
夏葉はまだ宙に滞在するその人物に鉈を振り回す。
背中向きになったその人物は迫る鉈の刃を有り得ない動きでくるりんと宙で回り蹴り飛ばし、そのまま夏葉の首に右足を掛けてまたぐるりと宙で回転。
両手を地面につき、バク転の要領で夏葉を後方へ投げ飛ばした。
夏葉も同様に木に叩きつけられる。
「よっ、と!へっへーん!お前たちまだまだ未熟だな!それじゃあこの森で生き残れないじょ!?」
その人物が倶盧蜜と夏葉に勝利宣言をしている時、その後ろに大男が現れ拳骨を落とした。
「ごらぁぁ!彌生!テメェは何勝手に動いたんだぁ?あ?」
彌生と呼ばれたその人物はよくよく見てみれば女の子。
倶盧蜜とそう変わらなさそうな見た目をしている。
腰まで伸びた長い髪を束ねることなく垂れ流し、黒い甚兵衛姿であった。
その彌生に一喝したのは身の丈六尺ほどのありそうな大男だった。
そう、男のはずなのだが、その見た目は花魁が着る派手な装いに似ている。
豪華な前帯に肩を晒した着崩しは女性のそれ。
しかし頭は丸め、ちらりと見える肉体は鍛えられた肉。
化粧もしているがその眼光や骨格はどう見ても男だった。
男は倶盧蜜に近づき、首根っこを掴むと自分の顔まで持ち上げる。
「あらやだいい男♡好みだわ」
額から冷や汗が溢れる。
「あ、あの〜。まだ自分、子供ですので」
何が?よくわからなかったが思わず口から出た本音だった。
「大丈夫よ。この時代、嫁ぎ嫁がされなんてザラだから」
男の顔が近づいてくる。
身の危険を感じ倶盧蜜は暴れる。
しかしがっしりと掴まれた腕はどう足掻いても振り解けない。
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