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倶盧蜜が試しの森に来てひと月が経った。
訓練着と言われる明星の草糸で作られた服を着て森中を全速力で駆け抜ける日々。
日の出から正午近くまで走り続ける。
休憩は自由にしていいが課題があり、この森を30周しなければならない。
もちろん周回に嘘がないように八津の側にある札を通過するたびに返していく。
同じ修行を行う彌生は朝起きてから1刻半でこれを終える。
倶盧蜜は依然として終えれない。
もちろん修行は走り込みだけではない。
ここで食う分は自分で調達しなければならない。
つまり、朝食を捕まえることが次の修行になる。
この森には生き物がいる。
ウサギや鳥、虫に魚だっているのだ。
もちろんきのみもあるがこの森の木々はかなり高く登るのも一苦労。
正直あれだけ走った後に木登りは無理。
だからウサギや鳥などを捕まえようと試行錯誤して罠を作ったり獲物を追いかけてまた森を走り回ったりしている。
しかしうまく捉えることはできず、このひと月は森を横断する川の水のみ。
もうさすがに限界が来ていた。
そんな倶盧蜜を横目に八津と彌生はたんまりと食事を捕獲する。
それを見るたびに羨ましく、そして見ないように我慢する。
だが寝床が一緒なので食事の時はたまらない。
肉を焼く匂い、咀嚼音、その全てが猶の空腹を嫌でも刺激してくる。
わざとやってるんじゃないか?と疑いたくなる。
「クロ」
八津がこのひと月、修行内容言ってから初めて語りかけた。
もしかしてと期待してしまう。
「飯はやらないわよ」
その言葉に倶盧蜜はうだなれた。
「はっはー!師匠に期待しない方がいいよー。絶対にやらないから」
彌生も追い討ちをかけるように言葉を重ねる。
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