0人が本棚に入れています
本棚に追加
倶盧蜜は必死だった。
優しかった姉。
いつでもどんな時でも味方でいてくれた。なんでもできて頼りになって、憧れていた自慢の姉だった。
なんで何も言ってくれないんだ?弁明の一つでもないと本当に姉が殺したみたいじゃないか!
姉から逃げるのをやめた。
姉も立ち止まった。
真っ直ぐに夏葉の目を見つめる。
「ど、どうして?」
それが精一杯だった。
カラカラの喉から出た言葉。
姉は泣いていた。その涙が何を意味しているのかはわからなかったが、自分がとった行動を悔やんだ。
何も言わない?弁明の一つ?何を言ってるんだ!姉から逃げ出した臆病者がそんなことを言っていいはずがない!
何とか立ち上がり、夏葉を見つめる。
夏葉は踵を返し、走り出した。
今度は姉が逃げ出した?
突然の行動に倶盧蜜は追いつけない。
夏葉は家へと走っていく。
入り口の母の死体を踏まないように中に入りすぐに出て来た。
その両手には鉈が握られていた。
「!?」
今度はあれで殺すのか?
説得を試みようと口を開いた。
その時だった。
姉は右手の鉈を振りかぶり、投擲した。
ぐるぐると死神の鎌に見えるそれは真っ直ぐにこちら目指して飛んでくる。
え?う、あ?どうしよう。無理、避けられない。間に合わない。このままじゃ首が飛ぶ?頭に刺さる?あぁ、ダメだ。考えてる前に手を動かせ!前に出して防御しろ!あぁ、ああぁ動かない。動かせない。思考が速くなっているんだ。死の直前、全てが静止したように見える。
これが死なのか?この静止した世界がそうなのだろうか。
その鉈から逃げるのをやめた。
その鉈は倶盧蜜を攻撃したもので無いことがわかったから。
鉈は予想通り顔ギリギリを掠めて後方へ飛んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!